恵比寿の過ごし方

東京都写真美術館のミュージアムショップを起点に巡る、アートなまち・恵比寿/NADiff BAITEN

1995年1月に恵比寿ガーデンプレイス内に開館した、写真と映像に関する日本で初めての総合的な美術館「東京都写真美術館」。その2階にあり、多くの写真好きを虜にしているのが、アートショップ「NADiff(ナディッフ)」が手掛けるミュージアムショップ「NADiff BAITEN(ナディッフ バイテン)」だ。

東京都写真美術館の展覧会図録をはじめとする展覧会関連商品や、写真と映像に関する国内外の書籍を中心に、NADiff BAITENのオリジナルグッズも並べられている。

スタッフの審美眼でセレクトされた希少な写真集の数々

NADiff BAITENには多くの写真集が取り揃えられているが、いわゆる一般的な書店で販売されているような、メジャーな風景写真の写真集などは置かれていない。

「当店は東京都写真美術館のミュージアムショップということで、写真や映像に関する本を中心に取り揃えていますが、より作家性のある写真集をメインにセレクトしています」と話すのは、店長を務める田代つかささん。

ミュージアムショップでありつつ、今の写真の新しい動向なども意識して本を並べたり、一般に流通していない写真家による自主制作の写真集を直接仕入れたりと、さながら独立した書店のようだ。また、インディペンデント出版レーベルやリトルプレスのアートブック、さらには写真に関する指南書やエッセイ、古書なども陳列されている。

日本の写真家、海外の写真家が分かりやすくアルファベット順に並べられた書棚。

ここに来れば日本の写真家はもちろん、海外の写真家の希少な写真集が見つけられるとあって、何冊もまとめ買いをする外国人旅行客の姿も。

またNADiff BAITENを訪れる人の中には、写真や芸術に造詣の深い人も多く「現代写真家でおすすめの人はいる?と聞かれて、お客様の好みを伺ったうえでご提案することもあれば、ジャンルを問わずイチ推しを教えてと尋ねられて、推薦した写真集を買っていただくことも。写真集の専門店として信頼いただいているということなのかなと思うとうれしいですね」と田代さん。

「写真家の名前は分からないけど、モノクロ写真で、男性の写真家で…などヒントをいただきながら、私たちの知識を総動員して、推理して探し当てることも。スタッフの知識を問われる仕事でもあります」

東京都写真美術館では、年間に20を超える展覧会が常に並行して開催されている。そのため、展覧会に合わせて目まぐるしく商品が入れ替わるのが、通路に面した店頭のゾーン。取材時には、東京都写真美術館の3つの展示室すべてで展覧会が開催されており、展覧会図録や展覧会関連商品がずらりと並べられていた。

店舗の手前のゾーンには、東京都写真美術館で開催されている展覧会関係の図版やグッズが並べられ、展覧会を鑑賞したほとんどの人が、まずここに立ち寄る。

レアなカメラアイテムやロゴ入りグッズの品揃えは、ミュージアムショップならでは

「展覧会が多く、かつ、その展覧会の内容ごとにお客様の層がガラリと変わるので、それに合わせて雑貨や新刊のフェアを考えています」と話す田代さん。

そのため、店舗中央に設けたフェアコーナーは、いつ訪れても新しい雑貨や新刊を発見できる楽しさで溢れている。

店舗中央のフェアコーナー。この日陳列されていたのは、動物や植物のイラストが目をひく、デザイン性が高くギフトにも最適なカレンダーの数々。

そして、東京都写真美術館のミュージアムショップだけあって、カメラ関連のユニークなアイテムと出会えるのもNADiff BAITENならでは。

台湾発祥の大人のデジタルトイカメラ「PaperShoot」は、胸ポケットにも収まる厚さ12mm、重さ80gのコンパクト設計。驚くことに、この薄いボディに、レンズをはじめ、シャッターボタン、撮影モードスイッチ、SDカードストレージなど、カメラに必要な機能が搭載されている。

デジタルツールなのに、どことなく漂うアナログ感に魅了される。「PaperShoot」2万6,400円。重厚感のある木箱入りで、プレゼント用に選ぶお客様も多い。

「new moon screen」は、小さなオブスクラ(写真の原理による投影像を得る装置)で、小さな穴を通して像が射影されるアイテム。レンズを向けて、スクリーン部分をスライドしながらピント調整をすれば、手前のスクリーンに上下逆さになった景色が映し出される。楽しみながらカメラの原理を知ることもでき、カラフルな商品展開で、観光客を中心に人気を集めているそう。

これ自体で写真は撮れないが、日常の風景もとっておきの景色も、いつもと違った見え方が楽しめる不思議な小箱。「new moon screen」6,600円。

その名も「カメラバッグ」は、ソファや椅子に使用するインテリアファブリックを使った手作りバッグが人気のブランド「MIDORIKABAN」とNADiff BAITENのコラボレーションで生まれたバッグ。色違いで買い揃える人もいるほどの人気アイテムだ。

開口部が大きく出し入れしやすいのがポイント。肩掛けが幅広く取られているので、肩への負担も少ない。「カメラバッグ」8,250円。

また、最近ラインナップが増えているのが、東京都写真美術館のシンボルマークを使ったアイテム。「来年、東京都写真美術館が総合開館 30周年を迎えるので、記念になるような商品をこれからどんどん増やす予定です。海外からのお客様も多いので、お土産にも喜ばれています」と話す田代さん。

トートバッグ3,300円、Tシャツ2,200円、ハンカチ1,650円、キーホルダー880円。

「写真美術館という、写真に特化した美術館がそもそもほかにないので、当店を訪れるお客様は、写真好きで詳しい方からライトな層、ふらりと訪れる外国人観光客などさまざまです。写真集や本などはニッチなものを揃えつつも、写真好きかどうかに関わらず、世代に関係なく楽しんでもらえる雑貨類をセレクトして、全体のバランスをうまくとれるように意識しています」

ギャラリーが点在する恵比寿でアート巡り散歩を楽しんで

東京都写真美術館以外にも、恵比寿には写真や絵画を展示するギャラリーが多数存在している。

徒歩10分ほどの場所には、NADiffの本店である「 NADiff a/p/a/r/t(ナディッフ アパート)」があり、若手作家から世界的なアーティストによるものまで、多彩な展示を実施。アートブックやユニークなアートグッズを取り扱っていて、芸術との新たな出会いの場になっている。同じビルの3階にはギャラリー「 MEM(エムイーエム)」 も。

また、NADiff a/p/a/r/tとは逆方向に10分ほど歩くと、海外のアートブックを多数取り揃えている洋書専門店「 POST(ポスト)」 を見つけることができる。

「東京都写真美術館で展示を鑑賞して、当店で写真集を見て、POSTでさらに違うジャンルの写真集や洋書を眺めて――。NADiff a/p/a/r/tは、以前は本が中心でしたが、ギャラリーメインにリニューアルしたので、さまざまな現代アート作家さんの展示を楽しんでいただけます。

実際、東京都写真美術館と当店、そしてNADiff a/p/a/r/tを同時に巡られる方も多いんですよ。展覧会を鑑賞して、写真集や洋書を眺めて、現代アート作家や写真家の展示も楽しむ、そんなアート巡りができるのは恵比寿のまちならではだと思います」

※商品情報は2024年12月現在のものです。

text: Noriko Sasaki
photo: Takuji Iigai

SHOP INFO

NADiff BAITEN [ ミュージアム・ショップ ]

東京都写真美術館 2F

写真と映像に関する国内外の書籍を中心に、展覧会カタログ、展覧会関連商品を展開。そのほか、非流通本や貴重な古書、カメラ関連の雑貨やオリジナルのデザイングッズも。

定休日:毎週月曜日ほか ※美術館の休館日に準ずる
営業時間:
10:00~18:00(木・金曜日は20:00まで) 
※営業時間は事情により変更される場合があります
電話番号:03-6447-7684

店舗詳細: https://bit.ly/4f1P1jg

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