恵比寿の過ごし方

ヱビスの過去、現在、未来を味わう金曜日

今週の金曜は久しぶりに学生時代の友人に会う予定。今回は「新しくできたYEBISU BREWERY TOKYOに行ってみたい」というビール好きの友人のリクエストに応えることに。

サッポロビール本社棟の下にオープンしたYEBISU BREWERY TOKYO。「35年ぶりに恵比寿にブルワリーが復活した」と、同僚の間でかなり話題になっていました。恵比寿ガーデンプレイスタワーで働き始めて数年経つけれど、前身のヱビスビール記念館には足を運んだことがなかった私。だからこそ今回の訪問は一層楽しみでした。

エントランスを抜け階段を少し降りると、館内全体を一望することができます。かつての工場の一部を活かした空間だけあって、まるで劇場ホールのような開放感。外観からは想像もできない世界に出合え、何ともいえない高揚感に包まれました。

館内は「ミュージアムエリア」「ブルワリーエリア」「タップルームエリア」という3つのエリアで構成。それぞれテーマを過去、現在、未来をテーマとしていて、ヱビスを異なる時間軸で体験できるのが特徴です。

まずは「ミュージアムエリア」へ。さまざまな写真や資料が展示されていて、ヱビスブランドの誕生から現在までのストーリーをたどることができます。

ヱビスビールが誕生したのは1890(明治23)年。ドイツ製の醸造設備を用い、ドイツ人技師を招き、現在の目黒区三田でビール作りがスタートしたそうです。工場の跡地に恵比寿ガーデンプレイスが建てられたことは知っていたけれど、ヱビスビールが明治生まれとは知らなかった私。この時点で大きな衝撃を覚えました。

さらに驚いたのが、恵比寿という駅名はヱビスビールが発祥であるということ。当初は荷馬車で配送していたものの、出荷量の増加に伴い追いつかなくなり、1901(明治34)年にビール積み卸し専用の駅、恵比寿停車場が開設。その5年後に後のJR「恵比寿駅」が開業したそうです。なお、一企業の商品名が駅名となるのは、全国的に極めて珍しいとか。

今やオシャレな街の代名詞ともいえる恵比寿。若い世代の中にはかつてビール工場があったことを知らない人も多いかもしれません。そんな人こそ過去の風景やヱビスビールのルーツを知ることで、新鮮な驚きを味わえそうですね。

ここではビール醸造工程の一つ「仕込」が行われていて、麦汁という麦芽のおかゆのようなものが作られているそうです。後に麦汁は地下に運ばれ、発酵・貯酒・ろ過といった工程を経て、おいしいビールが完成するのだとか。黄金色に輝く醸造設備は本場ドイツ製とのこと。サッポロビールのビールへの情熱を感じます。

現在、造られているビールは限定を含め4種類。フラッグシップは「ヱビス∞(インフィニティ)」と「ヱビス∞(インフィニティ)ブラック」。ヱビス∞はヱビスビール誕生当時に使用していたと思われるドイツ産のホップ「テトナンガー」を採用。さらにどちらも、かつて恵比寿工場で使用されていた酵母が用いられています。サッポロビールではビール造りで使用してきた酵母を厳重に保管していて、約1000種類のなかからヱビス酵母を再選抜したそう。

造りたてのビールが飲めるのがこちらの「タップルーム」。「ヱビス ∞」や「ヱビス ∞ ブラック」をはじめ、期間限定や数量限定など多彩なヱビスを楽しむことができます。ひときわ存在感を放つのが、かつての恵比寿工場で使われていた仕込釜。オブジェとして空間を優雅に彩っていて、周囲には釜を囲むようにソファ席が配されています。

多種多様なテーブルや椅子が置かれているので、グループでもカップルでも思い思いに過ごせそうな雰囲気。スタンディングテーブルもあるので、ビールを飲みながらパソコン作業といった使い方を今度はしてみたいなと思いました。

そして、待ちに待った「ヱビス∞」とご対面。澄んだ黄金色はうっとりするほどの美しさ。ヱビスらしい骨太感がありつつも、フルーティーな華やかさも感じられました。1890年当時を思い起こさせるホップと、かつて恵比寿工場で使われていた酵母のマリアージュ…。古の時代に想いを馳せながら飲むと味わいもまた格別です。

タップルームエリアの一角には「マスターブリュワーズルーム」というスペースがあり、タイミングによってはChief Experience Brewerの有友亮太さんと会話することもできます。この日は「ヱビス∞」の開発にあたっていかに酵母の扱いに苦戦したかなど、貴重なエピソードを聞かせていただきました。ゲストとの会話から得た着想を開発に活かす可能性もあるそうで、ビール好きならばぜひコミュニケーションしたいところですね。

ブリュワーズルームには有友さんの私物が置かれていて、個人的に気になったのが壁側にある古地図。有友さんがビールを学ぶためドイツに留学している時に古本市で出合ったもので、1889年に描かれたものだそう。ヱビスビールが造られた1年前と考えると、なかなか感慨深いですね。なお、5月からはガイド付きツアーも開始する予定とのこと。ヱビスビールの歴史やビールの醸造工程などを詳しく説明してもらえるようです。

YEBISU BREWERY TOKYOでヱビスの世界観に浸ったので、もっとヱビスを飲んでみたい気分。そこで、色々な種類の樽生ヱビスをそろえる「YEBISU BAR STAND」に立ち寄りました。

YEBISU BAR STANDはYEBISU BARの新業態で、2022年にここエントランスパビリオンにオープン。通し営業なので遅めのランチや仕事帰りの一杯などに使いやすく、恵比寿ガーデンプレイスの行きつけの一つでした。

なかでもお気に入りは「TASTING OF YEBISU」。5種類のビールから2種をミニグラスで楽しめます。今回は私、友人ともに「ヱビス マイスター」と「琥珀ヱビス プレミアムアンバー」を選びました。

ミニグラスは、通常のグラスの約2/3サイズなので気軽に飲み比べできるのがうれしいところ。スタッフのビールの注ぎ方はお見事で、泡がきめ細かく、白く盛り上がっています。

「ヱビス マイスター」はふくよかな薫りとシャープなキレが特徴的。対して「琥珀ヱビス プレミアムアンバー」は香ばしい風味とほのかな甘味が感じられました。なお、飲み比べでは色が薄い方から濃い順に飲むと、味の変化がより楽しめるのだそう。

「YEBISU BAR STAND」の料理はビールとの相性を大切にしているのが大きな特徴。例えば牛肉のコク豊かな「YEBISU BAR ビーフシチュー」は「琥珀ヱビス」と、薫香がアクセントの「スモークサーモン 煎り酒がけ」は「ヱビス マイスター」と合わせるのがおすすめ。

もう一杯何か飲みたいとスタッフに相談し、提案されたのが「翡翠ブラック~KAWASEMI BLACK~」。10種類以上のスパイスを用いた「伊良コーラ」と「ヱビス プレミアムブラック」を組み合わせたビヤカクテルで、コーラの甘さがプラスされるため、ビールの苦みがマイルドに。強いお酒が苦手な人にもピッタリかもしれません。

ヱビスの世界観を体感できる施設や、上質な料理とともにヱビスを堪能できるバー。またお気に入りのスポットを見つけて、友人に紹介したいという気持ちになりました。

毎日恵比寿で働いていると特別感を感じにくいけれど、日常とは違う空間に身を置き、ヱビスを楽しんだことで、改めて恵比寿が素敵な場所であると実感できた金曜日でした。

SHOP INFO

YEBISU BREWERY TOKYO

YEBISU BREWERY TOKYO 1F

さまざまな価値観が交差する、東京・恵比寿。ヱビスビールの誕生と共に「恵比寿」と名付けられたこの街は、人とビールの物語に溢れている。1890年にヱビスが生まれたこの街で、私たちは再びビールづくりをはじめる。ここはヱビスの座標軸でもあり、新たなビール文化が生まれる拠点。私たちの原点とも呼べるこの場所から、新しいビールとビールを楽しむ幸せな時間の数々が、いま、まさにここから、つぎつぎと生まれていく。
YEBISU believes beer is ∞.

店舗詳細:https://gardenplace.jp/shop/detail/99

YEBISU BAR STAND [ ビアバー ]

エントランスパビリオン・時計広場 1F

個性豊かな樽生ヱビスを揃え、お料理はおひとり様でも愉しみやすいものをラインアップ。
待ち合わせやちょっとした合間など、1日の何気ないシーンをあなたらしいビール時間に彩る、それが「YEBISU BAR STAND」です。

店舗詳細:https://gardenplace.jp/shop/detail/39

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