年に1度の「お祭り」! 「恵比寿映像祭2025」の見どころや楽しみ方をナビゲート

2023-2024年(Dia Bridgehampton、ニューヨーク)Courtesy the artist, Dia Art Foundation, New York, and Greene Naftali, New York. Photo: Bill Jacobson Studio, New York[参考図版]
恵比寿を舞台に年に一度開催される、映像とアートの国際フェスティバル「恵比寿映像祭」。17回目となる2025年は、「Docs ―これはイメージですー」を総合テーマに、2025年1月31日(金)〜2月16日(日)に開催(一部を除く)。無料で鑑賞できる展示作品を筆頭に、上映プログラムやトークセッションなど多彩な催しが組まれている。
見どころは? アートに詳しくなくても楽しめる? 担当キュレーターのひとり、東京都写真美術館学芸員の田坂博子さんと、長年同イベントに参加してきた、現代アートに造詣の深いアートプロデューサーの住吉智恵さんに話を聞いた。
展示は動く通路にも! 恵比寿ガーデンプレイスが映像に彩られる15日間
会期中、恵比寿駅からメイン会場となる東京都写真美術館に向かうと、動く通路「恵比寿スカイウォーク」では英語のテキストバナーが、美術館の入り口ではカラフルなLED映像が出迎える。これは今回の目玉のひとつで、アメリカのメディア・アーティスト、トニー・コークスによるもの。恵比寿映像祭2025では、日本初公開となる作品群を、美術館内のほか、恵比寿ガーデンプレイスの各所で目にすることができる。

「彼はアメリカの政治やポップカルチャーをテーマに、テキストと音楽を組み合わせた独自の視覚表現を行うアーティスト。クリティカル(批判的)な思想を込めつつも、一見広告のようにキャッチーで、すっと受け止められるのではと思います。移り変わる映像との偶然の出合いを楽しむのもひとつの鑑賞方法ですし、じっくり味わいたい方は、翻訳冊子の用意もあるので、それを活用するのも手です」と、田坂さんが解説する。
恵比寿映像祭2025の総合テーマは「Docs ―これはイメージですー」。総合開館30周年という節目でもある今回は、写真と映像を専門に扱う美術館として、収蔵コレクションを見直し、改めて写真と映像の歴史を考えることが出発点だった。そこから浮かび上がってきたのが「ドキュメント/ドキュメンタリー」を再考するという試みだ。
「恵比寿映像祭2025では、日本を拠点に活動するアーティスト4名を選出し、新作映像作品を発表するというコミッション・プロジェクトを行っています。彼らの作品は、個人的なもの、国家や歴史にフォーカスしたものなど、それぞれが異なる視点をもち、多彩なテーマを掘り下げていました。そこで得た着想が、映像祭全体の構成を考えるうえで大きなヒントになりました」(田坂さん)


母との時間を紡ぐ小田香、自身がろう者として手話を拠点とするワーキングプレイス(文化施設)を舞台に映像表現の可能性を探る牧原依里、日本統治時代の朝鮮半島にまなざしを向けた永田康祐、新潟水俣病患者運動を支え続ける人物を中心に描く小森はるか。作品を通して語られる物語に、新たな視野や気づきを得られるかもしれない。
国内外の幅広い年代の作品を通して、イメージと記録の関係を探る
一方、住吉さんは海外作家の作品にも注目している。
「タイのアーティスト、カウィータ・ヴァタナジャンクールは自分の体を張ったパフォーマンスがインパクト抜群です。このほか映像と立体を組み合わせた台湾出身の劉玗(リウ・ユー)など、アジアの女性作家のパワフルな作品に期待しています。カンヌ国際映画祭の最高賞「パルム・ドール」受賞者でもある映画監督、アピチャッポン・ウィーラセタクンの展示作品もぜひ見たいです」



展示に加え、じっくりと作品を堪能できる上映プログラムも豊富。1Fホールでは、前述のコミッション・プロジェクトの小森はるかと小田香の作品に加え、新旧の多彩なドキュメンタリーなどを鑑賞できる。大部分が会期中に2〜3回だけの上映なので、あらかじめスケジュールを確認し、チケットを確保しておくのがおすすめだ。
「SNSや配信サービスの影響もあって動画を見る機会は増えていますが、知られざる良質な映像を見られる映画館は随分減りました。そんななか、恵比寿映像祭は貴重な映像作品が見られるまたとない機会。私自身も毎年、日常のスケッチのようななにげない映像に思いがけず心を動かされることがあります」(住吉さん)
「瀬田なつきの《3つの5windows》という作品は、2015年に恵比寿ガーデンプレイスで撮影した映像も含まれています。撮影時期が3回に分かれていて、染谷将太さんなど登場する俳優のリアルな変化も印象的です」(田坂さん)

展示・上映される数々の映像作品に加え、19世紀の作家ウイリアム・ヘンリー・フォックス・タルボッドや、杉本博司などの東京都コレクションからの写真作品も展示。またライヴパフォーマンスやトークセッションなども予定されている。さらに期間中は、地域連携プログラムとして、周辺のアート施設も総合テーマに関連した展示やイベントを実施。各施設を巡るシールラリーも開催される。
愛らしいキャラクターも登場する、タブロイドを片手にいざ!
「展覧会というより、映像祭、まさに『お祭り』なんです」と、田坂さんが力説するのも納得する、コンテンツ満載の恵比寿映像祭2025。全体像を把握し、鑑賞の計画を立てるのに役立つのが会場で配布される公式タブロイドだ。映写機から生まれた愛らしいキャラクター「ye(b)izoちゃん」も随所に登場する。

「映像作品はとても多彩で、パッと短時間で観れるものがある一方、じっくり腰を据えて向き合う作品もある。みなさん普段から、YouTubeやTikTokなどで動画を見慣れていると思うんです。あまり構えずに、Netflixなどの延長で気軽に作品に触れてみるといいと思います」(住吉さん)
アートのまち・恵比寿が、映像作品を中心としたコンテンツで満たされる15日間。新たな体験を求めて、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
Text: Taemi Suemoto

総合開館30周年記念 恵比寿映像祭2025 Docs ―これはイメージです―
開催期間:2025年1月31日(金)〜2月16日(日)[15日間]月曜休館
※コミッション・プロジェクト(3F展示室)のみ3月23日(日)まで
開催時間:10:00〜20:00(最終日2/16は18:00まで)
会場:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス各所、地域連携各所
料金:入場無料
※一部のプログラム(上映など)は有料
東京都写真美術館詳細: https://bit.ly/40Tr0Xu