恵比寿の過ごし方

ロダンやブールデルに会える屋外美術館!? サッポロ不動産開発・宮澤社長と巡る、恵比寿ガーデンプレイス

国土交通省の都市景観100選にも選ばれている恵比寿ガーデンプレイス。ショッピングや食事が楽しめるのはもちろんのこと、エリア内の随所に名だたる芸術家のアート作品が展示されているのをご存知だろうか?

そこで、開発段階から恵比寿ガーデンプレイスの歴史を知る、サッポロ不動産開発株式会社の代表取締役社長を務める宮澤高就さんに、エリア内に配置されているアート作品とその楽しみ方を聞いた。

なぜ恵比寿ガーデンプレイスにアート?

恵比寿ガーデンプレイスだけではなく、昨今の大規模再開発で開業した複合商業施設には、広々とした広場や緑地スペースが設計され、アート作品が展示されている。そこには、訪れた人にゆっくりとした時間を過ごしてほしい、目を休めて心を豊かにするようなアートに親しんでほしいという想いが込められている、と話す宮澤さん。

①19世紀を代表するフランスの彫刻家、オーギュスト・ロダンの『永遠なる休息の精』(1898年)。シャトーレストラン「ジョエル・ロブション」前のシャトー広場に展示されている。

「元々ここには1889年に創業したヱビスビール醸造場(後のサッポロビール恵比寿工場)がありました。1988年に工場移転のため閉鎖となり、その跡地を再開発して1994年に開業したのが恵比寿ガーデンプレイスです。他の複合商業施設ではコンテンポラリーなアート作品が展示されているケースが多いですが、ここはサッポロビールが100年以上前に工場をスタートさせてから脈々と歴史を紡いできた場所。そういう歴史的な背景から、現代的なアート作品だけでなく、彫刻界の巨匠であるロダンやブールデル、マイヨールなどによるオーセンティックでクラシカルなアート作品も展示しています」と宮澤さんは話す。

②オーギュスト・ロダンの『永遠なる休息の精』と向き合うように展示されているのが、同じくフランスの彫刻家、アントワーヌ・ブールデルの『果実』(1911年) 。

クラシカルなアート作品が選ばれた理由は他にもある。恵比寿ガーデンプレイスのデザインコンセプトは「ヨーロピアンテイスト」。サッポロビールのビール造りはドイツから醸造技術を導入して始まったという歴史があるため、建築やランドスケープのデザインはドイツの街を参考に設計された。また、ビールのほかにワインも手掛けているともあり、フランスを感じられるような建物をということで建てられたのが、シャトーレストラン「ジョエル・ロブション」。外壁のライムストーンをフランスからわざわざ取り寄せて、一から建てた本格的な邸宅である。

「クラシカルなアート作品は、ここの土地の成り立ちや背景、デザインコンセプトとも合致するうえに、空間との親和性が高くなじみやすい。恵比寿ガーデンプレイスを訪れるお客様には、コンテンポラリーなアート作品とクラシカルなアート作品、両方を楽しんでいただけたらという考えで作品を選んでいます」

重厚感のある現代アートにも注目

コンテンポラリーなアート作品のなかでも、いちばん多くの人の目に触れていると思われるのが、JR恵比寿駅から、動く通路「恵比寿スカイウォーク」を通り抜けると、最初に目に飛び込んでくる大きな石の彫刻。人気ドラマ『花より男子』(2005年)の象徴的なシーンのロケ地として使われたことで、一躍有名になった作品だ。ここで待ち合わせをする人、しばし腰を下ろして休憩する人、写真撮影をする人など、数あるアート作品のなかで最も親しまれている作品である。

③恵比寿ガーデンプレイスを訪れる人が必ず目にするのが、鉄や石を用いた有機的な作品で知られる現代日本彫刻の代表的な作家、土谷武の『握手する人』(1994年)。

「ここからシャトーレストランまでが一望できるので、写真を撮って帰られるパターンが多いんですが、ぜひ奥のシャトー広場まで足を延ばしていただき、ロダンやブールデルといった、普段は美術館でしか観られないような本物のアート作品にも触れていただきたいですね」

なかには変わった場所に設置されているアート作品も。『握手する人』がある時計広場から、奥のシャトー広場に向かう途中にふと空を見上げると、真鍮製のオブジェを見つけることができる。丸みを帯びた金色の三角形が特徴的な『クロワッサンが飛んで行く』だ。

④主に照明を多く手がけたプロダクトデザイナー、永原浄の『クロワッサンが飛んで行く』(1994年)。

この街の過去と現在を結びつける象徴的なオブジェも必見

恵比寿ガーデンプレイスが、ヱビスビール醸造場の跡地に建てられたことを記憶に残す遺構がエリア内にいくつかオブジェとして展示されている。なかでも象徴的なものが、サッポロビール本社ビル玄関前に設置された大きなカブト。

⑤今でも風が吹くと、風見鶏のようにぐるぐる回るそう。

これは旧工場の製麦棟乾燥室の屋根の通風筒(煙突)に取りつけられていた装置。ビールを作る際には、大麦から麦芽を作る製麦過程のなかで、乾燥・焙煎を行う工程がある。通風筒とその先端に取り付けられたカブトは、それらの工程で発生する香りや熱を逃がし、雨から麦芽を守る役割を担っていた。中世ヨーロッパの騎士のカブトに姿が似ていることから、カブト煙突と呼ばれ、風が吹くとカブトが回り、通封筒の中に雨風が吹き込むのを防いでいた。

開業30周年を迎える恵比寿ガーデンプレイス

2024年10月8日に開業30周年を迎えた恵比寿ガーデンプレイスのブランドコンセプトは、「はたらく、あそぶ、ひらめく。」。

「アート作品に触れることで、新しい自分や今まで気づいていなかったことに気づくとか、広い意味で“ひらめく”と解釈しています。広い恵比寿ガーデンプレイスをゆっくり回遊しながら、点在するアート作品を鑑賞して、新しい“気づき“を見つけていただけたらうれしいですね」

記事内で紹介した①~⑤のアート作品の設置場所。これ以外にも10を超えるアート作品が点在しているので、ぜひ探してみて。

他の複合商業施設ではなかなか見られないクラシカルなアート作品が風景に溶け込むように点在し、さながら屋外美術館のような恵比寿ガーデンプレイス。広々としたエリア内にそっとたたずむコンテンポラリーなアートや、街の歴史を感じられるオブジェなど、ここでしか見られない景色をゆっくり堪能してみてはいかがだろうか。

text: Noriko Sasaki
photo: Takuji Iigai

恵比寿ガーデンプレイス

店舗詳細: https://gardenplace.jp/

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