モノ・コト

夜風に吹かれながら食とシネマを愉しむ、週末の大人時間 

2024年で開業30周年を迎える恵比寿ガーデンプレイス。毎夏、屋外でグルメと映画を楽しめるイベントが開催されている。今年は「FOODIES’ PICNIC(フーディーズピクニック)」と題し、7月15日(祝)まで行われ、内容もさらにスケールアップしているようだ。連日多くの人で賑わう会場の様子をリポートする。

開放的な空間で過ごす、都会派ピクニックへ

仕事帰りや休日、陽が傾き始める夕方からの出かけるのにおすすめだ。

梅雨の到来を待たず、夏日が続く都内。金曜日の午後、陽が傾き始めると暑さも和らぎ、人々が屋外に繰り出してくる。恵比寿ガーデンプレイスの時計広場では5週にわたって館内の飲食店が入れ替わりで「FOODIES’ PICNIC TERRACE(フーディーズ ピクニック テラス)」へ出店。特設ストールの前には屋根付きのテーブル席が設置され、自由にテイクアウトスタイルでフードやドリンクを楽しめる。ガーデンプレイスの入り口として見慣れていたはずのこの場所が、ふだんと違う賑わいを見せている。

JR恵比寿駅東口直結の歩道、スカイウォークを抜けた先に現れる円形の時計広場が、「フーディーズ ピクニック テラス」に。

「フーディーズ ピクニック テラス」では仕事帰りに仲間とビールを楽しむ人、待ち合わせたカップル、犬の散歩のついでにおしゃべりに興じる人たちが、開放的なこの場所で思い思いにくつろいでいるのが印象的だ。すぐ隣にあるライブレストラン、​ブルーノート・プレイスからときおり漏れ聞こえる生バンドの演奏が大人の雰囲気を盛り上げる。仕事帰りと思しきグループが、フーディーズ ピクニック テラスの側にある​​ヱビスバースタンドでビールをテイクアウトして合流する姿も。いつものガーデンプレイスが、ちょっとしたお祭り気分に包まれているみたいだ。やがて恵比寿駅方面の空が赤く染まり出すと、センター広場では野外シネマの準備が始まっていた。

この日はウェスティンホテル東京のザ・テラスが出店。写真手前左から、「地中海シュリンプカレー バターライス添え」(¥1,500)、「シェフの気まぐれサラダ」(¥1,000)、「クラフトドリンク」(各¥600)。7月12日(金)からは、同ホテルの龍天門の特製メニュー「スペアリブのチャーシュー」「よだれ鶏」が登場する。

思いがけない映画との出合いが待っている

センター広場では期間中の金、土、日曜日19時30分から全19作品の映画が無料上映されている。「PICNIC CINEMA」と題して、今年は食にまつわる作品や印象的な食のシーンが登場する作品が揃う。16時ごろからスクリーン前の人工芝には人が集まり始め、ピクニックシートを敷いてドリンク片手にゆるやかな時間を楽しんでいる。この野外シネマの企画を手がけている、全国で移動映画館を主宰するキノ・イグルーの有坂 塁さんに話を聞いた。「ここは、都会のど真ん中に公園のような場所を作って自由に映画を鑑賞できる、天国のような空間です。野外でおいしいお酒や食事とともに過ごせると、人は感情を解放しやすくなるんです」

「自分ではふだん決して選ばない作品に出合えたらラッキーです。ジャンルや時代を超えて偶然見た作品が、気づかなかった自分の引き出しを広げてくれる」とキノ・イグルー有坂塁さん。
人口芝エリア以外でも、センター広場を囲む飲食店のテラス席などから映画鑑賞をする人たちも。

ふらりと買い物に立ち寄った人や、夕涼みに訪れた人など、誰でも気軽に参加できるのが野外シネマの醍醐味だ。今年はスクリーンも280インチに拡大し、センター広場のスケールにふさわしい規模になった。多くの飲食店やショップが周囲を取り囲む中庭のようなこの場所は、空中に大屋根が設置されているため多少の雨でも上映可能だ。「これまでに大雨や台風でやむなく上映を一時的に中断したこともありました。でもここに来たお客さんは運命共同体。自然現象も演出のひとつとして皆さん楽しんでいますね」

7月5日(金)に上映される「ウィ、シェフ!」(2022年、フランス映画)。©Odyssee Pictures – Apollo Films Distribution – France 3 Cinéma – Pictanovo – Elemiah- Charlie Films 2022

上映が近づくと、有坂さんセレクトによるBGMが響き始め、いよいよ会場は熱気に包まれる。時計広場で食事を楽しんでいた人も、スクリーンに引き寄せられるようにスロープを降りていく。2階の通路から立ち見する人もいて、さながら円形劇場のような趣だ。今日の上映を楽しみに訪れた人もたまたま立ち寄った人も、映画がスタートすると皆が一斉にスクリーンに釘付けになる。なんだかヨーロッパの地方都市に来たような錯覚に陥ってしまう。

あたりが暗くなり始めると「フーディーズ ピクニック テラス」とセンター広場をつなぐ歩道の両サイドも客席に早変わりした。

一般的に映画館でお酒や食事は御法度だが、ここでは他人に迷惑をかけないという暗黙の了解のもと、細かいルールは特になし。周囲のざわめきや吹き抜ける風を感じながら過ごすこの空間は、映画館とは違う開放感に満ちている。リラックスしていると人は作品に感情移入しやすくなる……そんな有坂さんの言葉そのままの雰囲気だ。映画が終わる頃、会場には和やかな空気が漂い、エンドロールが流れると自然と拍手が起こっていた。最後にはステージに立つ有坂さんから簡単な作品の解説があり、「この作品が好きな人におすすめの映画」が紹介される。芝生の上では興奮冷めやらぬ様子で作品について熱心に語り合っている人たちもいて微笑ましい。

「フーディーズピクニック」の期間中はウェスティンホテル東京をはじめとするガーデンプレイスの人気店が出店し、「ピクニックシネマ」ではバリエーションに富んだ映画がラインナップされている。どちらを目当てに訪れてもよし、都会のオアシスのような空間を楽しむ大人のピクニックで一足早い夏の思い出を作ってみてはいかがだろう。



text: Junko Kubodera
photo: Taro Oota

FOODIES’ PICNIC

日時:~2024年7月15日(祝)

■PICNIC CINEMA
上映:金・土・日曜各19:30~
場所:恵比寿ガーデンプレイス センター広場
料金:入場無料

■FOODIES’ PICNIC TERRACE
時間:平日17:00~22:00、土日祝11:00~22:00
場所:恵比寿ガーデンプレイス 時計広場

※各イベント日程、PICNIC YOGAの詳細はこちらでご確認ください。

https://gardenplace.jp/event/detail/281

SHARE