フレンドリーなマスターが歓迎。ひとりでも気軽に立ち寄れるMUSIC BAR berkana
恵比寿ガーデンプレイスには、コンサートが開催されるザ・ガーデンホールや定期的にライブ演奏が行われるブルーノート・プレイスなど、上質な音楽に触れられるスポットがある。レンガ造りの細長い建物ブリックエンドに店を構えるMUSIC BAR berkana(ミュージックバー ベルカナ)もそのひとつ。ガラス張りのドアを開くと、音響機器とウイスキー好きのオーナー、森山裕之さんが温かく迎えてくれる。
「好き」と「遊び心」が詰まった大人の隠れ家
2016年にオープンしたミュージックバー ベルカナは、ブリックエンドが開業した当初からある唯一の店だ。店内に入ると、スピーカーから流れる上質な音楽に包まれる。壁一面に並ぶウイスキーのボトルと長さ約11mの一枚板のカウンターテーブルは圧巻。カウンター席に座ると、アーチ状の窓から眼下を行き交うJR山手線を眺められる。
「この場所を初めて見たときはスケルトンで、アーチ壁が鉄骨むき出しの状態でした。それが工場の跡地のような雰囲気で、廃工場のバーをコンセプトに内装をデザインしました」と森山さん。
ミュージックバーにしたのは、「音響機器とお酒という自分の好きなものを詰め込んだ店にしたかったから」だという。
大学生の頃、将来は好きな音楽を自由にかけられる場所にいたいと考え、テレビ局やCDショップなど音楽に関わるバイトをしたが、自分の好きな曲を自由にかけられる場所ではないと気付く。ある時、飲食店なら自分の願いが叶うのではと思いつき、ショットバーでアルバイトを始めた。それから約30年、バー業界に携わっている。
店を始めるとき、音響機器の予算は限られていたが、お気に入りのマッキントッシュのアンプはどうしても使いたかったという。機器は定期的に買い換えるが、アンプはマッキントッシュ一択。UVメーター(音量を示す針式の測定器)が付いた見た目に惹かれて購入したものの、使えば中低音の伸びがよく、温かみのある音が自分好みだったという。
レコードは3000枚ほどあり、邦楽、洋楽、ロック、ジャズなどジャンルは幅広い。特に好きなアーティストや好きな曲はなく、みんなが知っている音楽をいい音で聴いてほしいとの思いで、その日の気分やお客さんの年齢層に合わせて選曲する。
ウイスキーをはじめ、ワイン、各種カクテルなどアルコールも種類豊富。見た目の美しさにこだわり、飾り用のドライフルーツは手作り、ロックアイスは一つひとつ牛刀で角を削る。
お客さん一人ひとりの日常に寄り添う
ミュージックバー ベルカナの営業を続けるうえで森山さんが心がけているのが“通常運転”。
多彩な業態で飲食店を展開する会社に勤めていた頃、店でレストランウェディングやフェアを行うなど、「非日常感」「特別感」を演出することがあったそう。イベントに参加するお客さんには喜んでもらえる一方で、知らずに店を訪れたお客さんを断ることが何度かあった。
このような経験から、MUSIC BAR berkanaではイベントや貸切といったイレギュラーの営業をほとんど行わない。予約もとらない。
「私たちスタッフがいい意味で頑張らず、お客さんにも頑張らせるようなことをしない。いつも変わらない、平凡な日常こそが幸せなんだと思います」
お店では積極的にお客さんに話しかけることはないが、世間話や趣味の料理の話などで盛り上がることもあり、常連客の中には友人の家を訪ねるような感覚で来店する人もいるという。
「うれしいとき、さみしいとき、暇なとき、どんな気分のときでも『あの店に行けば何とかなる』と思い出してくれる存在でありたいですね」
気負わずに行ける店の雰囲気、そして適度な距離間を保ちつつもフレンドリーな森山さんの人柄に常連客が多いのもうなずける。一人でも初めての人でも入りやすく、誰もが思い思いに過ごせる、とまり木のような場所なのかもしれない。
text: Mayumi Shimosaka
photo: Mitsugu Uehara
SHOP INFO
MUSIC BAR berkana (ミュージックバー ベルカナ)
JAZZ、CITY POPを中心にレコードを上質なスピーカーで聴きながらウィスキーを始め、カクテル、クラフトビールなど種類豊富なお酒を楽しめるバー。JR山手線を見下ろせる窓際に延びる約11mの一枚板のバーカウンターで一杯から楽しめる。
場所:BRICK END 1F
定休日:不定休
営業時間:平日17:00~26:00(L.O.25:30)、土曜15:00~26:00(L.O.25:30)、日祝15:00~24:00(L.O.23:30)
電話番号:03-6277-3786