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季節の恵みとワイン、温かなおもてなしのマリアージュを恵比寿で/ビストロエビス

JR・東京メトロ恵比寿駅周辺の賑わいから離れて渋谷方面に6分ほど歩くと、明治通り沿いのビル1階にありながら、隠れ家のような雰囲気の「ビストロエビス」に着く。ドアを開けると広がるのは、10席のカウンターテーブルを中心にしたシックな空間だ。

カウンターで楽しむ、洗練されたフレンチとワイン

ビストロエビスで腕をふるうのは、日本の名店「オテル・ドゥ・ミクニ」「レカン」「ラ・ブランシュ」や、パリの二つ星レストラン「ミッシェル・ロスタン」などで腕を磨いてきたオーナーシェフの平尾光司さん。

ビストロというと日本ではカジュアルな洋風の居酒屋的なお店を思い浮かべるが、「お店の形式にこだわりはありません。一度聞いたら忘れられないシンプルなものを、と思って考えたのがこの店名です」と語る平尾シェフ。本格的な料理を、くつろげる空間で楽しめるのが、ここ、ビストロエビスだ。

平尾光司シェフ(右)と、妻で、ワインセレクトとサーブを担当する平尾有紀さん(左)。中央は一緒に厨房で料理を担当する、スタッフのみことさん。抜群のチームワークが、和やかな雰囲気を生み出す。
平尾シェフは、東京やフランスの一流店で修行を重ねたのちに独立し、2010年に「ビストロエビス」をオープン。

カウンターにはテーブルクロスは敷かずに、カトラリーをセッティング。キャンドルと花が、空間に優しさを添える。

木を基調としたインテリアで、ほっとくつろげる店内。

厨房に掛けた黒板にあるのは、シンプルなメニュー名。素材名と簡単な料理手法が書かれていて、どんな一皿がやってくるのか期待が高まる。コース料理のオーダーも可能だが、アラカルトのメニューを楽しみに訪れるお客さんも多いそう。

看板にあるアラカルトのメニューのほか、1万1,000円、1万4,300円のコースがあり、3日前までの予約で1万6,500円のシェフお任せコースもオーダー可能。

サーブ担当は平尾シェフの妻、有紀さん。「本日のおすすめの前菜は『本まぐろとアボカドのタルタル』です。上にあしらったのは、クルトンとわさび風味のクリームで、黄色いソースにはゴールデンキウイを使っています」

美しさが目をひく、「本まぐろとアボカドのタルタル」4,400円。

シェフの丁寧な仕事ぶりが感じられる緻密な構成の中に、それぞれの素材の持ち味が生かされており、ひと口ごとに感動が広がる。

カウンターには、シェフと有紀さんの審美眼によって選ばれた器がずらり。好きな作家の個展に足を運び、コツコツと集めた思い入れのあるものも多いそう。

シェフが毎朝、市場で仕入れる旬の魚介を使ったメイン料理も、ビストロエビスの自慢だ。

「この時期、ぜひ召し上がって欲しいのが秋刀魚です。秋刀魚といったら日本では塩焼きですが、カダイフ(小麦粉やトウモロコシの粉から作られる細い麺状の食材)でサクサクッとした食感をプラスし、フレンチ仕立てにしました。うまみの濃い肝は一度取り出して調理し、裏漉ししたものを秋刀魚の中に戻し入れています。ビーツのほのかな甘さと一緒に味わってください」(平尾シェフ)

ビーツは焼いてピュレにして添え、さらに、乾燥させてパウダー状にしたものを仕上げに。ビーツならではのほのかな甘さと鮮やかなワイン色が、料理をさらに印象的にする。「秋刀魚とビーツ」4,180円。

メニュー名からは想像がつかなかった華やかな一皿に目を奪われていると、「こちらの料理には、ピノ・ノワールをどうぞ。エレガントで適度な渋みがあり、重すぎず軽すぎない、綺麗な味わいが秋刀魚との相性抜群です」と、ソムリエである有紀さんがワインを注いでくれる。

料理に合う一杯に迷ったら、ソムリエの有紀さんに相談して選ぶのもおすすめ。
デザートは、この季節ならではの「モンブラン」1,980円。二階堂明弘氏の焼き締めのドラ鉢に盛り、秋を表現している。

店を育んだ、恵比寿での人々とのつながり

2010年にオープンしたビストロエビスは、今年で15周年を迎えた。「独立を考えた当初、良い物件が見つかるのは半年ほどかかるだろうと予想していました。それが、わずか3日で出会ったのが、この場所です」(有紀さん)。

通り沿いの1階でシェフの目が行き届く規模感の広さ、開放感のある窓、入り口から奥に伸びるカウンター席など、思い描いていた通りの理想的な物件。また、店から少し歩くと住宅地もあり、落ち着いた立地も気に入ったという二人。

先約に決まりかけていたところ、平尾シェフが5枚もの手紙をしたため、その情熱に動かされた大家さんが迎え入れてくれたそう。

入り口から奥に伸びるカウンター席と、大きな窓が理想だったという平尾シェフ。釣り、自転車、盆栽、カメラなどシェフの幅広い趣味が、カウンター越しのお客さまとの会話の糸口になることもしばしば。

「当時の大家さんだったおばあちゃんから、現在は息子さんに代替わりされましたが、今も変わらず我が家を気にかけてくださって、心から感謝しています。5年前に誕生した娘も、とてもかわいがってもらっているんですよ」と語る有紀さん。

お店が10周年を迎えた頃は、コロナ禍と育児という、どちらも初めてのことに直面したが、常連のお客さんたちやスタッフから力をもらった。

「お店の端にゆりかごを置いて、赤ちゃんだった娘を連れてきていました。娘が泣くと、ミルクよ! おむつよ!と、お客さんが私たちに代わって面倒を見てくれて、有り難かったですね」と、有紀さんは当時を懐かしむ。「通常営業ができなかったコロナ禍の非常時には、お客さまが飲食チケットを提案してくださったりして、とても助かりました」

ワインは、ボトルのほかに、泡1種、白・赤各3種、ロゼまたはオレンジが1種と、グラスでも8種類から選べるのがうれしい。

「恵比寿は都会なのに、物の貸し借りをしたり、立ち話をしたりと、昔ながらのご近所づきあいが残っているんです。住まいも店舗からほど近い場所にありますが、みなさんのおかげで、楽しく暮らしています。お店や娘の成長を、親戚のように見守ってくれる方たちの存在は、とても心強いです」と有紀さん。15年間このまちで愛され続け、今では4世代で訪れてくれるお客さんもいるそう。

「ビルの建て替えのため、現在の店舗での営業は2026年5月ごろまでの予定なのですが、ビルが再建する3年後を目処に、また同じ場所に戻ってきたいと考えています。少しずつ変わっていく恵比寿ですが、この場所が変わらず好きなんです」と、平尾シェフも、この場所への思いを新たにする。

「一旦クローズするまでは、お客さまにはリラックスして今のビストロエビスを楽しんでほしいですね」と声を揃える二人。ここは、何度でも訪れたくなる温もりにあふれる、唯一無二の「ビストロ」だ。

text: singt
photo: Ryo Yonekura

SHOP INFO

BISTRO YEBISU(ビストロエビス)

オーナーシェフ平尾光司さんとワイン担当の有紀さんが営むフランス料理店。2010年7月にオープンして以来、季節を映した上質な料理と、温もりのある接客にリピーター多数。ビルの建て替えのため、現在の場所での営業は2026年5月末ごろに一旦クローズ予定。今後の移転情報などのお知らせは、Instagramで確認を。

場所:東京都渋谷区東3-15-8 
定休日:月曜(不定休あり)
営業時間:18:00〜22:00(L.O.)、お酒は〜23:00(L.O.)
電話番号:03-6427-3789
店舗詳細:Instagram @bistroyebisu2010

※2025年10月15日現在の情報です。また、表示価格は税込(10%)です。