恵比寿の過ごし方

開業2年目はさらなる進化を。新しいビールのカタチを発信する/YEBISU BREWERY TOKYO

2024年4月、恵比寿に約35年ぶりにビール醸造所が戻ってきた。「YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビスブルワリートウキョウ)」は、ヱビスビール誕生の地にあって、単なるブルワリーにはとどまらない、無二の個性とストーリーが詰まった場所だ。開業2年目スタートという節目を迎えるにあたり、チーフ エクスペリエンス ブリュワーの有友亮太さんと一緒に施設内を巡りながら、これまでを振り返っての感想と、これからの想いを聞いた。

開業日には多くのお客さまが。うれしい一方で、実は…

エントランスを抜けると目の前に広々とした空間が広がる。にっこりほほえむモザイクタイルの恵比寿様がお出迎え。

YEBISU BREWERY TOKYOのオープンは2024年の4月ながら、その数年前からプロジェクトに参画してきた有友さん。醸造責任者として施設内で提供するビールを手がけるのはもちろん、設計や内装にも関わってきた。それゆえ、開業日はさまざまな思いが込み上げてきたと話す。

「オープン前から驚くほど長蛇の列ができていて。とてもうれしい一方、みなさまの期待の高さを感じ、お待たせして申し訳なかったという気持ちが交錯したのを覚えています」(有友さん、以下同)

有友亮太さん:2012年入社。サッポロビール北海道工場、研究所を経てドイツへ留学し、Brewmaster(ブリューマスター)の資格を取得。帰国後ヱビスブランドの醸造責任者に抜擢され、YEBISU BREWERY TOKYOでも醸造責任者を務める。

初日の来場者数はなんと約2,300人。以降も絶えずにぎわいを見せ、恵比寿ガーデンプレイスの新たな名所に。そしてブルワリーとしては、1年で17種の新たなビールを世に送り出してきた。

「多種多様なビールをつくり、大変な面もありましたが、たくさんの新しい挑戦ができ、刺激的でした。何より、つくったビールを楽しまれるお客さまと間近に接し、『おいしい』の4文字を直接聞けるのは最高の喜びでした。『ヱビスが生まれた場所で、新しいビールの魅力を感じていただく』という目標は、ある程度は達成できたのではないかと思っています」

知って、見て、味わう、ヱビスの過去・現在・未来

ミュージアムエリアの入口には、「BEER is HISTORY」というキャッチコピーが。この「BEER is ○○」は施設内のあちこちに掲げられている。

YEBISU BREWERY TOKYOが目指すのは、ヱビスブランドを丸ごと体験できるスポット。施設内は3つのエリアに分かれていて、ミュージアムエリアでは、ヱビスの歴史に加え、恵比寿のまちとともにあったヱビスの姿を貴重な写真で知ることができる。まさに今いるこの場所で、130年以上前から紡がれてきたヱビスの歴史に思いを馳せると、時空をふわりと飛び越えたような、不思議な感覚に。

ヱビスの長い歴史の、現代の担い手でもある有友さん。展示ボックス内には有友さんが手がけたヱビスの新ライン「CREATIVE BREW」も並ぶ。

ミュージアムエリアを抜けると、ドイツ製の醸造設備が存在感を放つブルワリーエリア。ここではビールの原料となる麦芽やホップを実際に見て、触れたり嗅いだりしながら、ビールの製造過程を知ることができる。

醸造設備に隣接した「マスター ブリュワーズ ルーム」は、その名の通り、マスター ブリュワーである有友さんの部屋をイメージしたスペース。私物やビアグラスが飾られ、タイミングによっては、実際にここで作業する有友さんと出会えることもあるそう。

古い日本地図や鳥の絵はドイツ留学時に入手。ブルーのマグは旧バイエルン王国王子からの贈り物とか。「1年の間に、グラスは少しずつ増えていますね」と有友さん。

喉が鳴る! ここだけの限定ビールとおみやげは外せない

美しいゴールドのドラフトタワーから注がれるビール。注ぎたてをきめ細かい泡とともに飲み干したい。

そしてブルワリーのお楽しみといえば、もちろんビール! この地で醸造されたビールを味わえるタップルームエリアでは、通年で提供される「ヱビス∞」「ヱビス∞ブラック」に加え、期間限定や数量限定のビールが常時4〜5種ほどラインナップ。ナッツやポテトサラダ、ソーセージといったビールと相性抜群のフードも揃う。

4月3日からは、YEBISU BREWERY TOKYO開業から1周年を記念したビール「Key of the Night(キー オブ ザ ナイト)」が数量限定で登場。甘く香ばしい香りと深いコクを持つ、落ち着いた大人の時間にぴったりの1杯だ。

麦芽の豊かな風味が特徴のバーレーワインスタイルのビール。カラメル麦芽と黒麦芽による甘く香ばしい香りや、ロイヤルリーフホップの高貴なホップ香も特別感たっぷり。
「4種飲み比べセット」(2,100円)。エビス∞、エビス∞ブラック、フォギーエール、本日のビールの4種を飲み比べられる。その日のラインナップは現地で確認を。

「単品のほか、4種のビールを飲み比べできるセットもあります。ビールはテーブル席でゆったりと味わうのもいいですが、僕のお気に入りは、かつて恵比寿工場で実際に使われていた仕込釜を間近で眺められる場所。60年以上前のものとは思えない、銅の輝きが印象的です」

釜の周囲にはカウンターが設置され、眺めながらビールを飲める。釜のほか、工場にあった柱や階段も内装に取り入れられ、過去と現在がクロスする独特の空間に。

とっておきの体験を、家で思い返したり、周囲にシェアしたりできるお土産もお見逃しなく。オリジナルロゴが入ったビアグラスや、ビールのロゴマークが描かれたコースターのほか、マスキングテープや靴下などバラエティ豊かなグッズが並ぶ。

YEBISU BREWERY TOKYOオリジナルグラス(各1,200円)は、施設のロゴとヱビスロゴが両面にあしらわれたここだけの限定品。
コースター(各500円)は、ちょっとした記念品にぴったり。

次のステージは、ヱビスの、そしてビールの新たな聖地となること

施設をひと通り巡ったところで、ヱビスのブランディングを担当する遠藤雄一さんも合流。それぞれに、開業2年目のYEBISU BREWERY TOKYOへの思いを聞いた

「マスター ブリュワーズ ルーム」で遠藤さんとともに。実はこのスペースに限らず、施設内のあらゆる内装に有友さんの意見が取り入れられており「いわば大きな趣味部屋ですね」と笑う。多忙ななか、ここでの時間はささやかな癒しに。

「第一に、これまでと同様、おいしいビールをお届けすること。そのうえで、『ビールを楽しむ時間』の新たな提案ができたらと思っています。ビールは、飲み物でもありますが、読書や映画といった、他のカルチャーと一緒に組み合わせられるもの。お客様に、ビールを通して新たな発見や価値を提供できればうれしいですね」(有友さん)

「ヱビスブランドは、常に新しい試みやチャレンジを行ってきたという歴史があります。そのDNAを受け継いで、ビールの枠を超えた、驚くようなことを仕掛けたいですね。2025年5月末まで特別企画として開催している、漫画家の荒木飛呂彦先生にヱビスの美人画を描き下ろしていただき、ビールのパッケージに展開したり、オリジナルビールをつくったりといったプロジェクトもそのひとつ。今後はビール✖️アート、ビール✖️ファッションなんてこともできたらと構想中です。そういった試みを続けることで、新たなビールの文化をつくっていけたら面白いなと思っています」(遠藤さん)

タップルームエリアは、スタンディング含めて110席ほど。ひとりで、あるいは誰かとゆったりとヱビスを味わいつつ、ヱビスと一緒の豊かな時間を堪能したい。

YEBISU BREWERY TOKYOは、単なるビール醸造所ではなく、ヱビスビールの聖地、ひいてはビールの聖地でありたいーー。有友さん、遠藤さんの思いを胸に、恵比寿のまちに、ビールがさらなる活気と彩りを添えていく。

text: Taemi Suemoto
photo: Ikuko Soda

SHOP INFO

YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビス ブルワリー トウキョウ)

恵比寿ガーデンプレイス内

2024年4月3日オープン。ヱビスのルーツに親しむミュージアム、ヱビスブランドのビール醸造を行うブルワリー、ブルワリーで作られたビールを相性抜群のフードと楽しめるタップルームの機能をあわせ持ち、ヱビスブランドの過去・現在・未来を体験できる。

入場料:無料 ※ビール・フードは別料金(キャッシュレス決済のみ)
定休日:火曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始
営業時間:平日12:00〜20:00、土日祝11:00〜19:00
電話番号:03-5423-7255

店舗詳細: https://bit.ly/4jgZkm3

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